大判例

20世紀の現憲法下の裁判例を掲載しています。

大阪高等裁判所 平成12年(行コ)6号 判決 2000年6月29日

主文

一  本件控訴を棄却する。

二  控訴費用は控訴人の負担とする。

事実

第一申立

一  原判決を取り消す。

二  控訴人が日本国籍を有することを確認する。

三  被控訴人は、控訴人に対し、五〇万円及びこれに対する平成一一年三月一九日から支払済みまで年五分の割合による金員を支払え。

第二主張

一  二に当審における控訴人の補充主張を付加するほかは、原判決「第二事案の概要」のとおりであるから、これを引用する。

1  Aが遅れて控訴人の出生届を出したのは、Aが直ちに出生届を出せば、控訴人が実の父ではないBの子とされてしまうので、思い悩み、逡巡していたためであり、出生届が遅れたことを理由に母であるAが不利益を被ることがあっても、子に不利益が及んではならない。

子の出生届がなされていない間は、子の国籍をめぐる法的紛争は表面化せず、法的紛争が生じなければ、子に生来的に日本国籍を与えることには、何ら障害はないはずである。そして、Cは控訴人の出生届が出された後、遅滞なく控訴人の認知申告をしている。

控訴人が出生してから一年二か月が経過した後に、日本国籍を認めた場合に、法的安定が害されるほどの法律関係が子に生じているとは通常考えられないから、出生後一年余りを過ぎて認知手続が取られた場合には国籍を取得できないとすると、子の出生前に胎児認知をすることができず、出生後認知された子という同一の立場の子の間で、国籍取得の可否に関して新たな差別を生じさせることになる。したがって、控訴人の出生から一年二か月後にCが認知申告をしたとしても、控訴人の国籍取得は認められるべきである。

2  また、控訴人の父であるCが控訴人とBとの間の親子関係不存在の調停を申し立てたのは、控訴人の出生から約九年八か月を経過した平成七年三月であるが、右手続が遅れたのは、韓国においてCの認知申告が誤って受理されたからである。

Cは韓国において、認知申告が受理されたから、父としての責任を果たしたと考えたものであり、仮に認知申告が受理されなかったとすれば、出生届に近接した時期にBとの親子関係不存在を確定するための法的手続を取ったものと考えられる。

このようなCに責任がない事情があるときまで、親子関係不存在の手続を直ちに取るべきであるとはいえない。

3  以上のとおり、本件は客観的にみて、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ、日本人である父により胎児認知がされたであろうと認められる特段の事情があると解されるべきである。

理由

一  当裁判所も、控訴人の請求は理由がないものと判断する。

その理由は、原判決「第三当裁判所の判断」のとおりであるから、これを引用する。

1  原判決二五頁六行目「提出し」の次に「その旨、Cの戸籍欄に記載されたこと」を加える。

2  原判決二八頁六行目「むしろ、」から同頁七行目「推認するのが相当であり、」を削除する。

二  控訴人は、Aが控訴人の出生届を出すのを遅らせたのは、Aが実際の父でないBの戸籍に控訴人が入ってしまうのを躊躇したためで、そのためCによる控訴人の認知が遅れたが、控訴人の出生届がなされた後はCは速やかに認知申告をしており、また、Cが控訴人とB間の親子関係不存在確認等の法的手段をとるのが遅れたのは、韓国内において、Cの認知申告が受理されたためであり、本件は客観的にみて、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ、日本人である父により胎児認知がされたであろうと認められる特段の事情があると主張する。

Cは、控訴人の出生後、日本国内において、速やかにBと控訴人との親子関係が不存在である旨の判決等を得て、その後に、控訴人を認知することができたはずである。このように必要な各手続が速やかに取られておれば、胎児認知が適法になされた場合に準じて、客観的にみて、戸籍の記載上嫡出の推定がされなければ、日本人である父により胎児認知がされたであろうと認められる特段の事情があると認められる蓋然性があったのである。

ところが、原判決認定の事実によれば、Cは日本国内においては、控訴人がBの戸籍に入ったままであることを知りながら放置し、控訴人とBとの親子関係不存在確認についての法的手続を取ったのは、控訴人出生後、約九年八か月を経た平成七年三月二七日であるから、結局、日本人である父により胎児認知がなされたであろうと認められるに匹敵する特段の事情があるとは認められない。

三  よって、控訴人の控訴を棄却する。

(裁判長裁判官 井関正裕 裁判官 前坂光雄 裁判官 矢田廣高)

自由と民主主義を守るため、ウクライナ軍に支援を!
©大判例